私がやや本格的に走り始めた頃に読んだのが、
村上春樹さんの『走ることについて語るときに僕の語ること』
でした。なんと書きおろし(!)です。
もう5年以上も前になるんですね。
これほどの国民作家になると、公言するのがやや恥ずかしい
のですが、村上さんの作品は、ほぼすべて読んでいるファン
の一人です。
やはり私としては初期の作品が好きで、
個人的ベストワンを挙げれば
『世界の終わりとホードボイルドワンダーランド』、
このパラレルワールドにおける…終わらなくなるのでやめます(笑)。
村上さんがこれほどのランナーだったことは、
この本を読むまで知りませんでした、多分。(ちょっと春樹調で)
帯文章、見えるでしょうか?
“少なくとも最後まで歩かなかった”
私は、ここに痛く感動しまして、
「よし、俺もフルマラソンを走る時は、絶対歩かないゾ!」
と固く誓ったものです。
で、初マラソンは荒川でしたが、無事歩くことなく完走。
タイムはネットでぎりぎり5時間切るくらいだったと思います。
2回目も荒川。10分ほど短縮したと思います。
で、次の年には運命のつくばマラソン。
快調なペースでハーフを走り、自己のハーフ記録より
早いタイムを記録していたと思います。
そう、明らかにオーバーペースです。
30キロ以降に地獄が待ち構えていたのは、言うまでもありません。
そして、ついにあまりの辛さに足を止め、歩き出してしまいました。
あれは、私の40歳の誕生日のことでした。
一種の美学が崩れ去り、完走タイムはこれまでの2回より
ずっとよかったものの、敗北感しか残りませんでした。
それ以来、フルマラソンは避け、ハーフを年に1回というペースに。
ちょっとしたトラウマ状態です。
こんな話を、対談のときに石田さんと白戸さんにしました。
すると、
「じゃあ、今度から歩かないようにすればいいじゃないですか」
「とにかくペースを落とすこと、それが重要です」
この言葉を聞いて、なんだか憑きものが取れたような気持ちに
なりました。
やはり、走ることにも十人十色のこだわりなり、考え方が
あっていいけれど、継続することが目標ならば、
あまりこだわりすぎると目標を見失うということだと思います。
これが正しい、となってしまうと、いつの間にか自分の
首を絞めることにもなりかねないわけで。
ランニングの楽しみ方も目標もは人それぞれ。
自分に合った楽しみ方をみつけることが「継続」への道
だと思った編集Fでした。