巻末に収録している石田さんと白戸さんの対談。
実は、ページ数や本文とのダブりなどの関係で、
泣く泣くカットしたお話が結構あります。
今後、ブログでこのお二人の対談を、
時々、部分的に掲載していきたいと思います。
さて、今回はその第一回目。
最近、スポーツと体罰の関係がニュースで取沙汰されています。
このお話は、図らずもその問題への一つの解答があると思います。
…では、どうぞ!
★石田:スポーツの世界では、デビューから引退まで、まったくの無敗なんてありえないですよね。負けたことがなければ、成長の機会がなくなっちゃう。
■白戸:選手にとっては、負けないほうがいいのかもしれませんが、負けたことによる成長はすごいんです。誰の言葉か覚えていませんが、「スポーツは勝った時は喜び合えるし、負けた時は学ぶことができる」。確かに、負けた時のほうが、学びは多いものです。
★石田:ビジネスにおいてもそうだし、人生においては何でもそうでしょうね。
■白戸:スポーツは、この「学び」が経験できるのがいちばん素晴らしい。だからジュニアスポーツでは、負けることが実は大きな財産なんですよ。
★石田:勝ち続けると成功体験だけで終わってしまう。もし、その子に才能があってプロ入りしても、プロになった途端に、伸び悩むかもしれないわけですよね。
■白戸:苦く悔しい思いして、じゃあ、どうしたら俺はあいつに勝てるんだ。負けた子どもはそれを考える。その繰り返しが、「挫けない力」を養うんでしょう。
●石田:野球で言えば、楽天イーグルスの田中投手は、甲子園では負けたけれども、プロでは球界のエースにまでなりましたね。
■白戸:負けて成長する。ビジネスも本来はそうなのかもしれないですけど、スポーツはそれがよりわかりやすい。話はズレますが、だからスポーツには教育としての素晴らしさがある。負けて学んで、またそれをバネに頑張って、もしかしたらそれを何回か繰り返しているうちに「勝つ」というご褒美がもらえる瞬間がやってくる。だから勝った瞬間が嬉しい。何も努力しないで勝っていたら、あまり嬉しくないでしょう。
★石田:すぐにあきちゃうでしょうね。勝ってばかりのゲームにはまったく魅力がないでしょうから(笑)。
■白戸:スポーツは、体験談としてもわかりやすいし、学びの場としても最適。だから昔から教育や精神の鍛錬の場として使ってきたんだろうなと思います。それをみんな体験的にわかっているのでしょうね。
★石田:なるほど。順位もはっきり出るし、試合もほとんどが一日のうちに結果が出る。練習の過程を入れると長期戦ですが、ビジネスほど長いスパンで見なくてもいい。負けたら「何で俺はあの子に負けたんだろう?」と思うのが大事で、そこから課題を導き出して修正していく。確かに、素晴らしい学びの場と言えますね。
…いかがでしたでしょうか。
抜粋ですので、読み足りない部分があるかもしれません。
しかし、お二人がお話になっているのは、
いわゆる昨今の「勝利至上主義」とは対極のことです。
いきすぎた体罰の原因として、
この「勝利至上主義」や「結果しか見ない」という部分が大きく
あると思います。
思想家で武術家の内田樹さんが、著書の中で
高校野球について、こんなことを書いていらっしゃいます。
(以下引用)──夏の甲子園高校野球には四○○○校以上の高校が参加するが、勝利するのは一校だけで、残りはすべて敗者である。このイベントに何らかの教育効果があるとすれば、それは間違いなく「どうやって勝つか」を会得することではない。(中略)参加者のほとんど全員が敗者であるイベントが教育的でありうるとしたら、それは「適切に負ける」仕方を学ぶことが人間にとって死活的に重要だということを私たちが知っているからである。(『昭和のエートス』
「負け方を習得する」P59?60 文藝春秋文庫より)
勝敗ですべてをわけることは非常に危険だと思います。
そして内田さんは、「適切に負ける」には、
(1)すべて自分の責任として負けを受け容れること
(2)敗北から何かを学び取ること
(3)負けたけれどその過程がとても楽しかったと記憶すること
を挙げていらっしゃいます。
ビジネスでは常に結果が問われます。これは資本主義経済の
フレームの中では当たり前のことです。
ですが、スポーツにおいては、それが学びになる。
…今の社会にはそこまでの余裕はないのかもしれませんが、
ビジネスにおいても、失敗や挫折から学ぶことは
実は非常に重要だと思います。
本書の石田さんの挫折経験でも、大きな失敗や挫折を経て、
今の石田さんがあることがわかります。
勝つことばかりに汲々としがちな現代。
もっとチャレンジを恐れず、過程を楽しみたいものですね。
だからこそ、本書では、ランニングを強くお勧めしています!
踏み出したことのない距離への挑戦、
出たことのない大会への出場、
そして勝負を超えた、ゴールへの過程の重要さ。
ビジネスで凝り固まった思考や、体を解きほぐすには
これほど最適なものはありません。
というわけで、少し長くなりましたがこのへんで。
ご覧いただきましてありがとうございました!
また、ぜひご覧くださいませm(__)m。