(長文ですが、よろしければおつき合いください)
私にとって二回目となる富士五湖ウルトラ。
昨年の100キロから、なぜかスケールダウンして72キロに
挑戦して参りました。
とはいえ、72キロもやっぱり大変なレースになりました。
結果、無事に完走することができました。
こうして走れる自分の健康、一緒に参加した仲間、
後押ししてくださった方々、挫けない力FBで応援して
くださった方々、それ以外にも感謝してもし切れない思いです。
目標にしていたのは、9時間を切ること。
でも、これは今の私にはちょっと無謀な設定でした。
フルマラソンのベストが4時間10分くらいなので、
練習によっては狙えるタイムかな…と思ったのですが。
現実は、なかなか甘くないです。
でも、去年同様に、薄暗くなってきた富士北麓公園に
戻っていくときの、なんとも言えない胸を充たす
安堵感と充実感には、つらかったけれども
「走ってよかった?!」と思わせる魔力があるのです。
今回は、チーム☆挫けない力の有志(猛者)から私を入れて
6名で参加。うちMさんは112キロ! Sさんは100キロに
エントリー。私を含めたあとの4名は72キロでした。
Mさんと私を除く4名は、初のウルトラ挑戦です。
白戸さんの言葉、「スタート地点に立ったとき、すでに勝者」
という言葉がよみがえります。
みんな相応の練習を積み、人によってはケガと闘いながら
この日を迎えたわけです。
とはいえ、そんな悲壮感はなく、
Mさんのお友達のグループに便乗させていただき、
数台の車で現地入り、受付を済ませました。
(前日受付の様子)
総勢、20名を超える大所帯。
リーダーのTさんには宿の手配からレンタカーの手配、
食事に至るまで、大変お世話になりました!
みなさん、本当に爽やかな方ばかりで、楽しく飲んで食べました。
「あれ、明日みんなウルトラだよね?」
というほど気負いがない。
Tさんに聞くと、みんな楽しみで来ているから、
毎年こんな感じだとのこと。
…そうか! 結果もすべて自分が好きでしていること。
楽しんでウルトラを走るってすごい。
昨年の私はどちらかと言えば、必ず完走しよう、
という悲壮な気持ちもあったな、と思いました。
でも、楽しむからこそ、続くんですよね。
普通に考えたら、あり得ない距離を走るモチベーションは、
シンプルに?楽しむこと!?
目からウロコでした。
そんなこんなで、結構酒も入って自然にみんな眠りについて。
112キロ、100キロの人は3時くらいに起床し、
4時にはロッジを出ていきます。
72キロ組みは、6時半くらいまでぐっすりと(笑)。
ちなみに、会場まで徒歩数分というロケーションのよい
宿泊施設で助かりました。
当日は小雨。すごい霧でした。
そしてかなり寒い。72キロのスタート時でも寒いので、
112キロ、100キロはもっと寒かったでしょう。
昨年のようなことはないと思いますが、あの思い出が
蘇ってきます。
スタートラインに並び、さあ、これから楽しむことをテーマに
72キロを完走しようと決意。
ああ、こんなコースだった、と懐かしさと感慨が…。
やや気楽な気分で、一年前を懐かしむようなランニング。
100キロでもしばらく5キロくらいは下りですが、
72キロは、分岐で山中湖方面に行かないので、
さらに下りが続きます。
都合10キロほどは下り基調のコースを走るので、
かなり楽な展開でした。
(富士急ハイランド前です)
(去年はあったおにぎりが、ない!)
100キロ、112キロのランナーとも合流します。
ゼッケンの色が青、ピンクの人を見かけると、
僕の何倍も頑張っている人たち…と尊敬の念が湧いてきました。
さて、河口湖に入り、桜が満開であまりにキレイで
見とれてしまいました。この頃まではやや緩めに走っていた
こともあり、ずいぶん余裕だったな、と思います。
しかし、西湖に向かう途上の長い上り坂辺りから、
やや足に疲労が出てきました。
でも、まだ23キロくらいなので、ちょっと疲労が来るのが
早すぎます。
(河口湖大橋を渡るとエイドがあります)
(桜が満開!)
(この坂の先に、小学校に設営されたエイドが。
さらに、そこから急坂を上ります)
小学校に設営されたエイドでやや長めの休息を取り、
長い長い坂道をゆっくり歩かずに上っていきました。
挫けない力FBで、生中継…という感じでエイドに寄るごとに
投稿をまめにできたのもここくらいまで。
段々、そんな余裕がなくなってきました。
とにかく前進あるのみ。
昨年走っているので、ある程度このあとのコースは覚えています。
早くも、ゴールを逆算したりして…。
30キロ過ぎ、思ったほど体が軽くないのが気がかりでした。
(次のエイドで吉田のうどんを食べました。ちょっとぬるいけども
温かいものを食べると生きかえります)
しかし、その辺からタイムを気にし始め、
フルの42キロを予定では5時間でクリアしたかったのですが、
どう考えても20分くらいはオーバーしてしまいます。
慌ててペースを少し上げました。
(ここのエイドでは、事前に預けている荷物を受け取って、
インナーを変えてややすっきり)
精進湖のエイドがちょうどそのくらいの距離だったと思います。
下り基調だったので、ランナーがすれ違う狭い道を
とにかくできるだけ飛ばして走りました。
ここでまたひと息つき、残り30キロ!
でもまあ、これがまた長い。
ここからまた長くてダラダラした上り坂がありました。
本栖湖の辺りです。
去年、初めて歩いてしまった場所。
…ただ、今年はここで歩くわけにはいきません。
あのときは、山中湖を走っていたのですが、
今回はそこをショートカットしているわけですから。
その後も、何度も歩きたいという気持ちになりながら、
足のあちこちから痛みの信号を感受しながら、
ひたすら前に向かって走りました。
それにしても、走っていて思うのは、去年の自分は
我ながらよくがんばったものだ、ということ。
一年遅れで自分を評価するとは!
それも悪いことではないのですが、
去年の自分に今年の自分が食われてしまっている!
練習でも感じたことですが、やはり目標は
達成できる・できない関わらず、常に難しいものに
するべきだなあ、と痛感しました。
ところで、長い距離のレースでは、
人それぞれに、いろいろな思いや、決まったフレーズが
意味もなく頭に浮かんでくることがあるようです。
村上春樹氏は、それを「マントラ」と表現していたと思います。
私の場合、「ヴォッセー…」という言葉。
声の主は、どうもサッカー元日本代表監督のジーコ氏。
…長いこと、なぜこんな言葉が??と思って走っていましたが、
ふと、気づきました。
今、編集している本がブラジル関連の本で、ポルトガル語の
プチレッスンに、この「ヴォッセー…」がよく出てくる言葉として
紹介されています。
なぜ、ではジーコ氏か?
インタビューに答えるジーコ氏が、このフレーズをよく使うらしく、
いつかテレビ番組で、このジーコ氏の物真似をする人がいて
それを見て覚えていたらしい…。
それにしても…。
ずっと何キロ地点になっても頭の中で、
ジーコ氏(の物真似をした人)の「ヴォッセー…」が流れ続け、
これには苦笑しました。
足のあちこちに痛みが出始めましたが、
むしろペースを上げて、下り坂ではかなり前の人を抜かしていきました。
意外にまだ元気がある。
目標を72キロまったく歩かずに、とにかく走って完走することに
決めてゴールを目指します。
西湖、河口湖の反対側が結構長く、心が折れそうになりながら、
頭には「ヴォッセー…」が流れ続け、足を動かし続けました。
沿道の声援も本当に有り難かったし、エイドのボランティアの
皆さんにも助けられ、ハイタッチに活力を注入された思いがしました。
(残り10キロ。浅間神社近く。桜がここでも満開。
でも、眺める精神的余裕が…)
残り10キロのエイドで人心地つき、
さあ、とにかく95キロのエイドを目指します。
足は棒のようになっていて、すでに9時間が過ぎようとしている。
残り5キロの坂道が待っている。
去年はこの上りの坂道をすべて歩いて悔しい思いをしました。
今年は、3キロ以上の上りをすべて走れるか。
95キロで足を伸ばし、最後の給水。
長々と続く、ほぼ直線に見える杉林の中、
黙々と、下を向いて一歩ずつ足を踏み出す。
乳酸が太ももと、ふくらはぎに溜まっていくのがわかります。
(ちなみに走りながら撮りました。余力あるなら、
最後まで走れ、という…)
身体は軋み、息は上がってくる。
前を向くと、延々と続く坂道に精神的に参ってしまう。
1キロ通過。…いけるか?
しかし、ほどなくして、おそらく1キロ半くらいで歩いてしまいました。
悔しいけれど、これが今の私の実力。
その後も、なんども走ろうとしたけれど、無理でした。
そして、残り1.5キロくらいは下りになります。
かなり急な下りをガクガクの足で走っていきます。
そして、幾度か角を曲がり、ようやく北麓公園の灯りが!
ランナーを迎えるアナウンスの声!
自分にこんな力が残っていたのかというくらいかなりの
スピードで走ってゴールへ。
(ゴールでは晴れやかな笑顔、安堵した笑顔、そして感動の
泣き顔が)
テープを切って、タオルとメダルを首にかけてもらい、
安堵の溜息をつきました。
タイムは9時間42分53秒だったと思います。
ネットですが、グロスでも1分も違わないかな。
タイムは大幅に超えたものの、不足などはありません。
こうして、今年の富士五湖ウルトラチャレンジを無事に
ケガなく終えることができ、ただただ感謝!
(昨年に続いて、二つ目のメダルをゲットできました)
チーム☆挫けない力メンバーは、その後Mさんを迎えることが
できましたが、あまりの寒さに凍ってしまいそうで、
宿舎に帰って暖を取りました。
完走できなかったメンバーもいましたが、
みんなすごいチャレンジャーです。
前のめりで倒れるというか、最後まであきらめずに
とにかくみんなゴールを貪欲に目指したわけです。
来年があるのか、ないのか。
現段階ではなんともいえません。
初のウルトラだったメンバーの一人は、自分はもういい、
と言っていました。
でも、本当にそうなのかな?
あ、自分で自分の首を絞めるようなことを言っていますか?
とにかく、得難い経験というか、
会社と家庭の往復では、決して得られない、なんだか自分が
小さいけれども物語の主人公になって、
冒険をしてきたような気分を味わうことができました。
これが長距離の魅力なのかもしれませんね。
来年があるかどうかはともかく、
これからも、ライフワークとしてランニングを楽しみ、
大会を楽しんで、一生ランナーでいたい、
と想いを新たにした編集Fでした!